整骨院の保険はなぜ500円?受領委任という仕組み

結論から言う。整骨院で健康保険が使えるのは、業界の慣習でも、特別扱いでもない。「受領委任(じゅりょういにん)」という、患者が施術のたびに全額を払わなくて済むようにするための制度に基づいている。ただし対象は骨折・脱臼・打撲・捻挫といった急性のケガに限られ、慢性の肩こりや腰の重だるさは対象外だ。そして今、この制度は年々厳しくなっている。

なぜ厳しくなっているのか。それを、厚生労働省の通知の文言と、私自身が現場で実際に見てきたことを重ねながら、できるだけ正直に書いていきたい。先に断っておくと、これは「悪い整骨院を告発する記事」ではない。私は柔道整復師の免許を持ちながら、今は整骨院を経営していない。だからこそ、業界の内側の事情も、健康保険を運営する側の事情も、どちらにも肩入れせずに書けると思っている。

目次

整骨院だけ保険が使える理由――受領委任というしくみ

まず、いちばん基本的な疑問から片づけたい。「なぜ整骨院だけ、こんなに保険が使いやすいのか」という疑問だ。

病院や鍼灸院で自由診療(健康保険を使わず全額自己負担で受ける施術)を受けると、1回あたり数千円かかることも珍しくない。もし整骨院の施術も毎回全額払いだったとしたら、週に何度も通う必要があるケガの治療は、経済的に続けられなくなってしまう。

そこで作られているのが受領委任という仕組みだ。これは、患者が窓口では保険の自己負担割合(3割・2割・1割など)に応じた金額だけを支払い、残りの分は施術所側が保険者(健康保険組合や国民健康保険などの運営者)に直接請求する、という制度になっている。「委任」という言葉のとおり、患者は本来自分が保険者に対して行うべき請求の手続きを、施術所に代わってやってもらうという建てつけだ。

この仕組みがあることで、多くの人が3割負担程度で整骨院に通え、必要な期間しっかり施術を受けられるようになっている。

「整骨院は500円」とよく言われるのは、この自己負担割合の結果として出てくる金額だ。施術料そのものは数千円だが、窓口で払うのはその3割(あるいは2割・1割)なので、数百円におさまる。ただし金額は固定ではない。初検か再検か、施術した部位がいくつかによって変わるし、料金の算定基準そのものが改定される。「整骨院は必ず500円」という決まりがあるわけではない、というのは押さえておいてほしい。自分がいくら払ったのかを正確に知る方法は、この記事の後半で触れる領収証と明細書だ。

まずここは押さえておきたい。受領委任は、患者のために作られた制度だ。「整骨院は保険が使えて得だ」という話ではなく、「毎回全額払いだと通院が続けられなくなる人を守るための設計」だと理解したほうが、このあとの話が正しく見えてくる。

もともと健康保険の療養費という制度は、「まず全額を自分で立て替えて払い、あとから保険者に申請して払い戻しを受ける」という償還払いが原則になっている。整骨院の受領委任は、この原則に対する例外的な取り扱いだ。柔道整復(骨折・脱臼・打撲・捻挫といった急性のケガ)については、通院の頻度が高くなりやすいという事情を踏まえて、特別にこの委任のかたちが認められている、という位置づけになる。

実際に、整骨院で保険を使うにはどうすればいいのか

手順そのものは難しくない。窓口で保険証を提示し、いつ・どこで・どうしてケガをしたのかを具体的に伝える。この「負傷の原因」は、施術者が施術録に記載しなければならない事項として通知に定められており、あいまいな伝え方をすると、そもそも支給対象になるかどうかの確認自体ができなくなる。そのうえで、実際に受けた施術の内容と回数が記載された支給申請書を確認し、内容に間違いがなければ、そこに自分の手でサインをする。窓口では自己負担割合分だけを支払い、残りは施術所が保険者に請求する、という流れだ。

言葉にすると単純だが、この「内容を確認してからサインする」という一手間こそが、次の章でつまずいていた部分になる。

ただし、保険が使えるのは限られた範囲だけ

ここが、患者側で最も誤解されやすいところだと思う。整骨院で保険が使えるのは、どんな不調でもいいわけではない。

厚生労働省の通知(柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準の実施上の留意事項等について)は、支給対象をこう定めている。

療養費の支給対象となる負傷は、外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。(中略)外傷性とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すものであり、いずれの負傷も、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていないものであること。

そして、こう続く。

単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外であること。

つまり保険が使えるのは、「いつ、どこで、どうして負傷したか」がはっきりしている急性のケガに限られる。逆に言えば、原因のはっきりしない慢性の凝りや疲労には、そもそも制度上、保険は使えない。

ここで、検索している人の多くが引っかかるであろう「腰痛」の話をしておきたい。同じ腰痛でも、保険が使えるかどうかは中身によって分かれる。ぎっくり腰のように、ある瞬間に体を捻ったり無理な力がかかったりして急に痛みが出た場合は、「捻挫」に準じる急性のケガとして扱われる余地がある。一方、はっきりしたきっかけがなく、何週間も何か月も続いている腰の重だるさや張りは、通知が言う「慢性に至っていないもの」という条件から外れてしまう。「腰痛だから保険が使える/使えない」という単純な話ではなく、急に起きたケガなのか、じわじわ積み重なった慢性の不調なのかが分かれ目になる、ということだ。

「整骨院に行けば何でも保険で診てもらえる」というイメージを持っている人は少なくないと思うが、制度上はそうではない。この前提を知っておくだけでも、「保険適用がおかしいのでは」と感じたときの見立てが変わってくるはずだ。

イメージしやすいように、対象になりやすい例と、対象にならない例を並べておく。

保険が使える可能性がある例 保険が使えない例
転倒してひねった急性の捻挫 特にきっかけのない慢性の腰痛
スポーツ中に起きた突き指・打撲 長年のデスクワークによる肩こり
急に強い力がかかって起きたぎっくり腰(急性腰痛) 姿勢の悪さからくる慢性的な疲労感
転落・衝突などによる骨折・脱臼 単なる筋肉疲労の回復を目的とした施術

もちろん、これは目安であって、実際に対象になるかどうかは、負傷の経過や状態を診た施術者の判断による。ただ、「急に起きたケガなのか、じわじわ積み重なった慢性の不調なのか」という軸で考えると、多くのケースは整理できる。

もうひとつ付け加えておきたいのは、負傷から時間が経ち、状態が慢性に至ってしまった場合は、たとえ最初は急性のケガだったとしても、本来は保険の対象から外れていく、という点だ。通知が「身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていないもの」という条件を置いているのは、まさにこの「いつまでも急性のケガとして扱い続けない」という考え方を示している。

私が現場で見ていたこと

ここからは、私自身の話をする。

私が勤めていた整骨院などでは、施術を始める段階で、レセプト(保険請求のための書類)の白紙の部分に、あらかじめサインをもらっておくという運用をしていた。本来であれば、「あなたはこれだけ通って、これだけの施術を受けて、金額はこのくらいでした」という実績が印字された書類を患者に見せて、その内容を確認してもらってからサインをもらい、そのうえで請求する、という流れであるべきだ。それを、内容が印字される前の白紙の段階でサインだけ先にもらっておく。

毎回の来院のたびに書類のやり取りをしなくて済む、という意味では、手間が省けるやり方に見える。実際、私自身も当時はそれくらいにしか捉えていなかった。そこに疑いを持つ発想自体がなかった。

当時は会社のやり方だったため、疑問に思わなかった。いろいろな会社を見てどこもそうしていたので、それが普通だと思っていた。これは、私が実際に勤務先で見た範囲の話であって、業界全体がそうだったと言いたいわけではない。統計的にどれくらいの割合の施術所がこの運用をしていたのか、私には分からない。ただ、少なくとも私が見てきた現場では、それが「普通」として通っていた。

この業界に十年以上いて、よくよく考えると、それはおかしいのではないかと感じるようになった。何がおかしいのか。次の章で、条文と照らし合わせて説明したい。

条文はこう定めている――「委任年月日」まで自筆

受領委任の運用ルールを定めた厚生労働省の通知(柔道整復師の施術に係る療養費について)には、支給申請書の記入方法について、こう書かれている。

申請書(4) 「受取代理人への委任」欄は、患者の自筆により被保険者の住所、氏名、委任年月日の記入を受けること。利き手を負傷しているなど患者が記入することができないやむを得ない理由がある場合には、柔道整復師が自筆により代理記入し患者から拇印を受けること。

ここでのポイントは、氏名や住所だけでなく、「委任年月日」まで患者の自筆で記入することが求められているという点だ。委任年月日というのは、「いつ、この内容の請求を、この施術所に委任したか」を示す日付のことだ。これを患者自身の手で書いてもらう、と定められている以上、内容が確定する前の、日付も入っていない白紙の段階であらかじめサインだけをもらっておくという運用は、この規定が想定しているやり方とは違うということになる。

私が現場で見ていた運用は、この条文に照らすと、本来求められている手順を飛ばしてしまっていたことになる。当時の私にそこまでの知識はなかった。だからこそ「疑問に思わなかった」というのが正直なところだ。制度を学んだ今になって振り返ると、その意味がようやく分かる。

そして、こうも思う。手順を飛ばしていたのなら、それができなくなっていくのは、仕方のないことだ。そもそもやり方が間違っているのだから。これは業界がどうという話ではなく、私が見ていた運用について、私が今そう思う、というだけの話だ。

その結果、現場で何が起きていたか――「どうなっていますか」という問い合わせ

白紙の段階でサインをもらう運用が続くと、何が起きるか。患者は、自分が最終的にいくらの請求に同意したのか、自分自身では確認できないままになる。印字された内容を見て納得したうえでサインしたわけではないので、当然と言えば当然だ。

私が現場にいたときも、保険者から「受診照会」と呼ばれる患者への確認の連絡――いわゆる患者調査――が、かなりの頻度で来ていた。「どうなっていますか」という問い合わせは多かった。そして、患者本人が答えた通院内容と、施術所側が請求していた内容が「内容が違う」というかたちで食い違う問い合わせも、数多くあった。

この受診照会というのは、保険者が一方的に施術所を疑って行う「取り締まり」ではない。厚生労働省の通知にも、こう定められている。

保険者等は、療養費の支給を決定する際には、適宜、患者等に施術の内容及び回数等を照会して、施術の事実確認に努めること。

つまり、保険者が患者本人に「本当にこの内容で通っていましたか」と確認すること自体は、制度が最初から想定している、ごく当たり前の事実確認の手続きだ。ただ、その確認の場面で「内容が違う」という声が数多く上がっていたということは、患者が自分の同意した内容を正確に把握できていなかった、という現実を映していたのだと思う。これは患者が無知だったという話ではなく、内容を確認してもらう機会そのものが、患者に十分に渡っていなかったという、制度の運用側の問題だと私は考えている。

制度の側は、何を問題として想定しているのか

鍼灸師はやめとけ?現役はり師が語る唯一無二の価値 と あん摩マッサージ指圧師はやめとけ?学校を増やせない法律のフタ の2本で、私は受領委任という例外的な仕組みについては別の記事で改めて掘り下げる、と書いた。その宿題を、ここで果たしたい。

ここまで、白紙のサイン → 患者が内容を把握できない → 受診照会で食い違いが見つかる、という流れを、私が見てきた範囲で書いた。ただし、私が一つの現場で見たことが、国の制度が変わった理由だと言いたいわけではない。それを言えるだけの材料を、私は持っていない。

そのかわりに確かなことがある。通知そのものを読めば、制度の側が何を問題として想定しているかが分かる、ということだ。委任年月日まで患者の自筆を求めること、領収証と明細書を交付させること、保険者に患者本人への事実確認を求めること――こうした規定が積み重ねられていること自体が、そこに気をつけるべき点があると制度の側が考えている、という証拠になる。私が現場で見ていたものは、そのうちの一つの例にすぎない。

制度側の対応として、最近さらに一段踏み込んだ仕組みが用意されている。それが償還払いへの変更だ。通常の受領委任では、患者は窓口で自己負担分だけ払えばよいが、一定の条件に当てはまる患者については、この仕組みが外れる。つまり、いったん施術料金を全額窓口で支払い、あとから自分自身で保険者に請求する「償還払い」に切り替えられる、というものだ。

対象になりうる患者の条件として、厚生労働省の通知は次の4つを挙げている。

条件 内容
① 保険者からの受診照会(第35項の確認)に、繰り返し照会しても回答しない患者
② 複数の施術所で、同じ部位の施術を重複して受けている患者
③ 長期かつ頻回に施術を継続して受けている患者
④ 令和9年(2027年)1月以降、前月までの連続する12か月のうち、通算して8か月以上かつ9部位以上の施術を受けている患者

①〜③はすでに運用されている基準で、④はまだ来ていない、これから始まる基準だ。令和9年1月以降、直近12か月のうち8か月以上、しかも9部位以上という、かなり具体的な数値基準が新たに加わる。長期・頻回・複数部位という、これまで定性的に判断されてきたものが、ここにきて明確な数字で線引きされるようになる、ということだ。

これらの条件に該当し、注意喚起の通知を送っても改善が見られないと保険者が判断した場合、その患者には償還払い変更通知が送られ、以後は施術所に全額を支払ったうえで、自分で保険者に請求する形に切り替わる。受領委任という「患者のための便利な仕組み」から、その患者だけが外れてしまう、ということだ。

数字で見る、厳しさの中身

この「厳しくなっている」という話が体感だけの印象論ではないことを、厚生労働省の統計で確認しておきたい。

区分 平成25年度 令和3年度 増減
柔道整復の療養費 3,855億円 2,867億円 ▲25.6%
国民医療費(参考) 40兆610億円 45兆359億円 +12.4%

柔道整復(整骨院・接骨院)の療養費は、この9年間のうち8年が対前年マイナスで、平成25年度から令和3年度にかけて、全体の約4分の1が失われている。同じ期間に国民医療費全体は12.4%伸びているので、医療費全体が拡大するなかで、柔道整復の療養費だけが縮小している、という構図になる。

一方、施術所(整骨院・接骨院)の数はどうか。厚生労働省「令和6年衛生行政報告例」によると、柔道整復の施術所は令和6年時点で50,924か所。令和4年からの2年間で、増えたのはわずか8か所だ。この「+8か所」は純増、つまり新しく開業した数から廃業した数を差し引いた結果にすぎない。実際には、新しく開いた院と、たたんだ院が、ほぼ同じ数だけあった、ということになる。施術所の数はほとんど増えていないのに、療養費という「請求できる金額」は減り続けている。

ここで注意しておきたいのは、この数字が減っている理由まで、統計が教えてくれるわけではないということだ。療養費が4分の1減ったことや、施術所の数が頭打ちになっていることのどこまでが、適正化によるものなのかは、私にはわからない。適正化の影響もあるだろうし、人口の変化や、人が体の不調とどう付き合うようになったかという受け方の変化も、当然からんでいるはずだ。統計は「減っている」という事実を教えてくれるだけで、その理由まで教えてはくれない。私に言えるのは、少なくとも私が見ていた運用は、制度が定めた手順とは違っていた、ということだけだ。

読者にできること――「疑え」ではなく「受け取れるものを受け取る」

ここまで読んで、「じゃあ自分の通っている整骨院を疑ったほうがいいのか」と不安になった人もいるかもしれない。そうではない。この記事で伝えたいのは、「疑え」ではなく、「制度上、あなたが受け取れるはずのものを知っておく」ということだ。

厚生労働省の通知には、患者側の権利として、次のようなことが定められている。

  • 領収証は無償で交付されるのが原則。「正当な理由」がない限り、施術所は患者から一部負担金を受け取ったとき、無償で領収証を渡すことになっている。
  • 明細書も交付の定めがある。レセプトコンピュータに明細書を発行する機能が備わっている施術所では、原則として無償で明細書が交付される。その機能がない施術所でも、患者から求めれば、正当な理由がない限り明細書が交付される。
  • 施術者には、療養費についての説明義務がある。通知は「施術に当たっては、懇切丁寧を旨とし」「療養費を請求する上での注意事項について説明をすること」と定めている。

つまり、領収証や明細書は、頼めば当然もらえるものであり、療養費の仕組みについて説明を求めることも、患者として自然な行為だ。そして、支給申請書にサインを求められた際は、内容が印字されているかどうかを確認してからサインをする、というのも、条文に沿った当たり前の権利になる。何か特別な行動ではなく、制度がもともと患者に保障している当たり前のことを、当たり前に受け取るというだけの話だ。

なお、この記事で引用した条文は、どれも厚生労働省のウェブサイトで誰でも読める通知だ。専門家でなければ読めないものではない。気になる点があれば、記事末尾の参考文献から原文にあたってみてほしい。制度の中身を知っている患者が増えることが、結局はいちばん確実な適正化になると思っている。

まとめ――制度は、守られてこそ続く

受領委任は、患者が毎回全額を払わずに整骨院へ通えるようにするために作られた制度だ。急性のケガという限られた対象に絞ることで、本当に必要な治療にきちんと保険が使えるように設計されている。

その一方で、私が現場で見ていた運用は、その制度が定めた手順とは違っていた。そして通知には、まさにそうした事態を想定した規定が置かれている。委任年月日まで患者の自筆を求めること、領収証と明細書を交付させること、保険者に患者本人への事実確認を求めること、そして償還払いへの変更という踏み込んだ対応まで。私が見たものと、制度が備えている条項は、たまたま同じところを指していたというだけの話で、私の見聞きした範囲が制度を動かしたなどと言うつもりはない。

私自身、当時は会社のやり方だったため疑問に思わなかった。それが普通だと思っていた。今、制度の側から見直してみて、それがおかしかったのだと分かる。この記事は、誰かを告発するために書いたものではない。この制度がなぜあるのかを、患者の立場からも、施術する側の立場からも見てきた人間として、正直に伝えたかった。それだけだ。

制度は、患者のために作られている。だからこそ、その制度が正しく使われ続けることが、いちばん患者のためになる。

なお、なぜ柔道整復師という国家資格が民間の資格と法律上どう違うのか、そして治療家として実際にどれくらいの収入が見込めるのかという話については、それぞれ別の記事で改めて詳しく取り上げる予定でいる。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ整骨院だけ健康保険がこんなに使いやすいのですか?

「受領委任」という制度があるためです。患者は自己負担割合分だけを窓口で支払い、残りは施術所が保険者に直接請求します。毎回全額を払うと通院が続けられなくなる人のために作られた仕組みです。

Q. 整骨院で保険が使えないケースはありますか?

あります。厚生労働省の通知では、支給対象を「外傷性が明らかな骨折、脱臼、打撲及び捻挫」で「慢性に至っていないもの」に限っており、単なる肩こりや筋肉疲労は対象外と明記されています。

Q. 慢性の腰痛には保険は使えないのですか?

きっかけがはっきりしない、じわじわ続いている腰の重だるさや張りは、通知の言う「慢性」に当たり対象外になりやすいです。一方、ぎっくり腰のように急に力がかかって痛みが出た場合は、捻挫に準じる急性のケガとして扱われる余地があります。

Q. 施術所で支給申請書に白紙のままサインを求められました。おかしいのでしょうか?

厚生労働省の通知では、「受取代理人への委任」欄について、住所・氏名に加えて委任年月日まで患者自身の自筆で記入することが求められています。内容が確定する前の白紙段階であらかじめサインだけをもらう運用は、本来想定されている手順とは異なります。気になる場合は、内容が印字された状態を確認してからサインしてよいか、施術所に確認してみてください。

Q. 「償還払い」に変更されるとはどういう意味ですか?

通常は窓口で自己負担分だけを払えばよい受領委任の扱いから外れ、いったん全額を施術所に支払ったうえで、自分自身で保険者に請求する方式に切り替わることです。保険者からの照会に答えない、同部位の重複、長期・頻回な施術などが条件として挙げられており、令和9年1月以降は「直近12か月のうち通算8か月以上かつ9部位以上」という数値基準も加わります。

本記事の位置づけ

本記事は、整骨院・接骨院で健康保険(療養費)が使える仕組みについて、厚生労働省の公表通知に基づいて整理する目的で作成したものであり、特定の施術所・団体を批判・告発する意図はありません。本文中の現場経験は、執筆者個人が過去に見聞きした範囲の話であり、業界全体の実態を示すものではありません。統計的な割合については、公表されているデータの範囲でのみ言及しています。

保険適用の可否や、個別のケースにおける請求内容については、最終的にはご自身が通う施術所、または加入している保険者(健康保険組合・全国健康保険協会・国民健康保険など)に直接ご確認ください。

制度・統計は執筆時点(2026年9月2日確認)の公表情報に基づきます。療養費の算定基準や受領委任の取扱いは今後も改定される可能性があるため、重要な判断をする際は、必ず最新の一次情報(厚生労働省・加入する保険者等)をご確認ください。

体調に関するお悩みがある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

参考文献・出典

執筆者

山﨑駿(やまざき しゅん) あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師(すべて国家資格)/Doctor of Chiropractic(D.C.、Tokyo College of Chiropractic・CCEA認可課程)/オステオパシー(D.O.課程)専攻中。臨床歴12年、のべ数万人の身体に向き合ってきた施術者です。

【学歴】日本工学院八王子専門学校 柔道整復科 卒業/東京呉竹医療専門学校 鍼灸あん摩マッサージ指圧科 卒業/東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧RMITカイロプラクティック学科日本校)卒業/日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科 卒業/スティル・ジャパン・アカデミー(オステオパシー専門教育)在学中。

保有資格の詳細は運営者プロフィールをご覧ください。

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