「しんきゅう」と読む。
「はりきゅう」も広く使われていて、間違いではない。予約の電話でどちらを言っても、まず通じる。
答えとしては、ここで足りている。ただ、「どちらでもいい」で終わらせると、見えなくなるものが一つある。
なぜ二通りあるのか。理由は、この言葉が二つの別々のものを一語にまとめたものだからだ。鍼と、灸。そして法律は、その二つを今も分けている。免許も、国家試験も、別々になっている。
この記事では、読み方から始めて、免許、試験、そして現場で実際に起きていることへと、順に見ていく。
読み方は「しんきゅう」。「はりきゅう」も使われる
なぜ二通りあるのか
二通りある理由は、漢字の読み方の組み合わせにある。
漢字には音読みと訓読みがある。「鍼」は音読みが「シン」、訓読みが「はり」。「灸」は音読みが「キュウ」、訓読みが「やいと」になる。並べると、こうなる。
| 読み方 | 鍼 | 灸 | 組み合わせ |
|---|---|---|---|
| しんきゅう | シン(音読み) | キュウ(音読み) | 音読み+音読み |
| はりきゅう | はり(訓読み) | キュウ(音読み) | 訓読み+音読み |
「しんきゅう」は、音読み同士をそのまま続けた読み方になる。「はりきゅう」は、前を訓読み、後ろを音読みで読んでいる。訓読みと音読みが混ざったこの形を湯桶読み(ゆとうよみ。訓読みの語に音読みの語が続く読み方)という。「湯桶」そのものが「ゆ(訓読み)+とう(音読み)」であることから、そう呼ばれる。
ここで、一つ気づいてほしいことがある。「はりやいと」とは読まない。灸にも訓読みはあるのに、そちらは使われていない。混ざり方は、片側にだけ起きている。
そして、そもそもの話になる。なぜ、混ざることができるのか。
元が一語ではなく、二語だからだ。「鍼」と「灸」は、それぞれ別のものを指す独立した一字で、この言葉は、その二つを並べたものになる。だから片方だけを別の読みに置き換えられる。一つの語として固まっていれば、こうはならない。
読み方が揺れているのは、そこに二つのものが入っているからだ。
そして法律は、その字を一度も使っていない
二つのものが入っている、という話をした。その二つが、実際に分けられたまま置かれている場所がある。法律だ。
日本で鍼と灸の免許を定めている法律は、正式名称がこうなっている。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号)
第一条には、こう書かれている。
第一条 医師以外の者で、あん摩、マツサージ若しくは指圧、はり又はきゆうを業としようとする者は、それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許(以下免許という。)を受けなければならない。
見てほしいところが、三つある。
一つ。「はり師」と「きゆう師」が、別々の名前として並んでいる。 一つの名前ではない。
二つ。ひらがなで書かれている。 「鍼」でも「灸」でもない。
三つ。正式名称と第一条では、「きゆう」の「ゆ」が大きい。 「マツサージ」の「ツ」も同じく大きい。これは昭和22年当時の法令の表記がそのまま残っているもので、この記事でも、法律の文言を引くときは原文の表記のまま書く。
そのうえで、いちばん大きいのがここになる。
あはき法の全文を検索すると、「鍼灸師」という語は一度も出てこない。 代わりに出てくるのは「はり師」と「きゆう師」で、この二つが条文の中で繰り返し使われている。
「鍼灸 読み方」は、月に8,000回以上調べられている語になる(推定値・2026年9月実測)。読み方を知りたくて打ち込まれているその字を、法律のほうは使っていない。
では法律は、何をどう分けているのか。ここから先が、この記事の中身になる。
法律が免許制度を置いているのは4つだけ、という話は前に書いた(整体師に国家資格はある?免許があるのは4資格だけ)。その4つのうち2つが、鍼と灸になる。
法律が置いている免許は、二つ
第一条が置いている免許の名前は、三つある。あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許、きゆう師免許。「又は」でつながれて、それぞれ別の免許として並んでいる。
ここに柔道整復師を加えたものが、前の記事で並べた4つになる。
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師
- きゅう師
- 柔道整復師
そのうちの2つが、鍼と灸だ。 ひとまとめの一つではなく、二つ。はり師の免許と、きゅう師の免許は、別のものとして定められている。
そして、その両方を持っている人のことを、世の中では「鍼灸師」と呼んでいる。法律の側にその名前は無いが、指している人ははっきりしている。「鍼灸師」は、法律上の資格名ではなく、はり師ときゅう師の両方を持つ人を指す通称になる。
ここで、前の記事との違いを書いておきたい。同じ「言葉と制度のずれ」でも、種類がまるで違うからだ。
整体という言葉には、統一された定義が無かった。国の関係機関が資料をまとめるとき、参照できる定義を引いてくることができなかった。中身のほうが定まっていない、という話になる。
「鍼灸」は、そこが逆になる。指しているものは、はっきりしている。鍼と灸という、二つの具体的な操作だ。定まっていないのではなく、中身は定まっているのに、制度が使っている名前とずれている。
- 整体:定義が無い(言葉が何を指すのかが決まっていない)
- 鍼灸師:法律に無い(指すものは決まっているが、法律はその名前を使っていない)
読者が使っている言葉と、制度が使っている言葉は、そもそもずれている。ただし、ずれ方には種類がある、ということになる。
なお、なぜ法律は4つしか免許の対象にしないのか。その構造は別に書いた(カイロプラクティックとは?国家資格に「できない」理由)。有害でなければ規制されない、という法律の論理の話だ。
同じ法律の中のもう一つの免許、あん摩マッサージ指圧師には、養成校の数をめぐる別の事情がある(あん摩マッサージ指圧師はやめとけ?学校を増やせない法律のフタ)。同じ条文に並んでいる三つの免許が、たどってきた道はそれぞれ違う。
通称であることは、使ってはいけないという意味ではない
ここまで読んで、「では『鍼灸師』と名乗るのは間違いなのか」と思った方がいるかもしれない。そうではない。
私は名乗る。一般的に「鍼灸師」と呼ばれているし、学校の学科の名前にもなっている。 それだけポピュラーな言葉だ。
現に、この記事の末尾に載せている私の学歴には「鍼灸あん摩マッサージ指圧科」と書いてある。法律にこの字は無い、と書いた記事の下に、自分の卒業した学科名としてその字が出てくる。
それでいいと思っている。法律は免許の名前を定めているのであって、日常で人を何と呼ぶかまで決めているわけではない。履歴書の資格欄のように、免許そのものを書く場所では「はり師」「きゅう師」と書く。区別が要るのは、そこだけになる。
国家試験も、二つある
免許が二つあるということは、試験も二つあるということになる。
私が受けたときのことを書く。
試験は別々にある。まず共通の問題があり、そのうえで、はり師の問題と、きゅう師の問題がある。合否は、合計点で決まる。
構造にすると、こうなる。
| 部分 | 内容 | 効いてくる免許 |
|---|---|---|
| 共通の問題 | 体について学ぶ土台の部分 | はり師・きゅう師の両方 |
| 専門の問題(鍼) | 鍼の領域 | はり師 |
| 専門の問題(灸) | 灸の領域 | きゅう師 |
土台の部分は、鍼でも灸でも変わらない。だから共通の問題があり、その上に、それぞれの専門が乗る形になる。
受けている最中は、二つを受けているという実感は、そこまで強くない。分かれていることが形になって現れるのは、結果が出たあとになる。
さきほど引いた第一条を、もう一度見てほしい。「それぞれ、あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許又はきゆう師免許」と書いてある。「それぞれ」という一語が、試験の場では、点数の分かれ方として現れる。 条文の言い回しが、そのまま結果の形になっている、ということになる。
そして、ここが、この章でいちばん書きたいところだ。
鍼と灸の専門問題の点数が悪いと、片方だけ取得できて、片方は落ちることがある。
私自身は、両方とも一度でストレートに合格した。「片方落ちるかもしれない」という緊張感は、正直なところ、あまり無かった。共通問題をしっかり取れていれば、鍼の専門と灸の専門で焦ることはない——というのが、受けていたときの感覚になる。
ただ、これは私がそうだった、というだけの話だ。
はり師だけ受かって、きゅう師は落ちた。その逆もある。そういう人を、私は実際に見たことがある。
ここが、この記事でいちばん伝えたい事実かもしれない。
「鍼灸師」という一つの資格があるのなら、こんなことは起こらない。一つの試験に受かるか落ちるかの二択になる。ところが実際には、片方だけ受かるという結果が存在する。 二つが本当に別々のものだということの、これ以上ないくらい分かりやすい証拠になる。
世の中の説明は、たいてい「業務独占資格だから分かれている」で止まっている。制度の説明としては、それで正しい。ただ、分かれていることが現実にどう現れるかは、そこには書かれていない。現れ方は、こちらになる。
最後に、断っておきたいことがある。これは受験の助言ではない。勉強のやり方も、学校のことも、この記事では扱わない。書いているのは、免許が二つあるという事実が、試験の場でどういう形をとるか、ということだけになる。
試験に通った先で、実際にはり師・きゅう師として働くとどうなるのかは、別に書いた(鍼灸師はやめとけ?現役はり師が語る唯一無二の価値)。
鍼と灸は、作用も刺激も全く違う
同じ人が両方の免許を持っていることが多いので、鍼と灸は似たものだと思われやすい。
実際には、作用も刺激も、全く違う。
ここで、この記事が書けることと書けないことの線を、先に引いておきたい。
書けるのは、加えている刺激の種類が違う、というところまでになる。鍼は、道具を用いて体に働きかける操作だ。灸は、もぐさを燃やして熱を加える操作になる。道具と、熱。加えているものが、そもそも別のものになっている。
書かないのは、「何に、どう効くか」のほうだ。効果については、一人の施術者の経験で語れるものではないと思っている。この記事は制度と現場の話であって、効果を説明する記事ではない。だからここでは、加えているものが違う、というところで止める。
書かないのは、隠しているからではない。書けるだけの材料を、この記事が持っていないからだ。持っていない材料で語り始めると、どこかで言い過ぎることになる。
それでも、この一点だけで十分に大きい。違うものを加えているなら、それは違う技術になる。 違う技術なら、学ぶ中身も、試験で問われる部分も、分けたほうが筋が通る。法律が一つの免許にまとめなかったことも、試験の専門部分が分かれていることも、この違いの上に乗っている。
そして、ここで前の記事との違いが、もう一度はっきりする。
整体という言葉は、指している操作が定まっていなかった。だから「効くのか」という問いが、そもそも立たなかった。何を比べればいいのかが決められないからだ。
鍼と灸は、そこが逆になる。指している操作を、はっきり分けて書ける。 何をするのかを言葉にできるし、別の人が同じことを再現できる。だから制度の側も、二つに分けて名前を付けることができた。
言葉と制度のずれは残っている。だが、中身のほうは、はっきり二つある。
そして、ここから先が、この記事でいちばん奇妙なところになる。制度は、この違いを認めて二つに分けた。ところが現場では、そのとおりになっていない。
それでも、灸だけを受けに来る人はいない
私の臨床で、実際に起きていることを書く。
鍼をしてほしいという人は、たくさんいる。ところが、お灸をしてほしいと言ってこられる方は、ほとんど見かけない。
制度は二つに分けた。試験も分けた。片方だけ落ちる人までいる。それなのに、受けに来る側では、片方に寄っている。
制度は分けた。市場は分けなかった。
なぜか。理由は、たぶん一つだと思っている。
お灸は、自分でできるものが売られているからだ。
鍼を受けたいと思った人は、施術所に来ることになる。灸を試してみたいと思った人には、その前に選べる道がある。買って、家でやってみる、という道だ。
施術所に来る人は、困っているから来る。自分で試してみて間に合ってしまえば、そこで話は終わる。来るのは、自分で試して足りなかった人か、最初から人に頼もうと考えた人になる。灸には、その手前に一段、階段があるということだ。
ここで、大事な読み替えを一つしておきたい。
灸に需要が無いのは、灸が劣っているからではない。自分でできてしまうからだ。
この二つは、まったく別のことになる。前者なら、比べられて選ばれなかった、という話になる。後者は、比べられる前に用が済んでしまう、という話だ。同じ「来ない」でも、意味が正反対になる。
そして、ここに、この章でいちばん言いたいことがある。制度と市場は、同じものを見ていない。
制度が分けるかどうかを決めるとき、見ているのは、技術として違うかどうかだ。学ぶ中身が違い、身につけるものが違うなら、免許を分けて、試験を分ける。
市場が分かれるかどうかを決めるのは、そこではない。見られているのは、人に頼む必要があるかどうかになる。どれだけ技術として違っていても、自分で間に合ってしまうなら、頼みに行く理由は生まれない。
物差しが、そもそも違う。だから制度が二つに分けたものが、市場では一つに寄る、ということが起こる。
そして、考えてみると珍しい現象でもある。ふつう、自分でできることが広まれば、その分野に触れる人は増える。ところが職業としての需要で見ると、逆に働くことがある。自分でできるようになるほど、受けに行く理由が減っていく。 灸は、ちょうどそこに当たっている。
結果として、業界の中の認識もこうなっている。鍼を取る人が多く、その過程で灸も一緒に取れる——という順番だ。二つの免許は対等に置かれているのに、受け取られ方のほうは対等になっていない。
自分でやるお灸について、この記事では使い方を書かない。読むべきなのは市販品に付いている使用上の注意であって、記事ではないからだ。商品を挙げることもしない。ここで言いたいのは、そういう道が存在する、という事実のほうになる。
最後に、自分の見ている範囲の限界を書いておく。
これは私の臨床で見えていることであって、業界全体の割合ではない。灸を専門にされている方も、灸を求めて通われている方も、当然いると思う。私の手元に来ていない、というだけの話になる。
それでも、12年やってきて「お灸をお願いします」と言われた記憶がほとんど無い、というのは、それ自体が一つの観察になると思っている。
こんなときは、医療機関へ
自分でできる範囲がある、という話をした。だから、その反対側の線を引いておかなければならない。
自分で様子を見てよい範囲と、そうでない範囲がある。次のような症状があるときは、鍼にも灸にも行く前に、まず医療機関を受診してほしい。
- 手足のしびれが続いている、力が入らない
- ろれつが回らない、顔や体の片側の感覚がおかしい
- これまでに経験したことのない強い頭痛
- めまい、ふらつき、ものが二重に見える
- 症状が日を追って強くなっていく
こうしたものは、一般にレッドフラッグサイン(危険を知らせる兆候)と呼ばれる。何科にかかるかは症状による。首や腰の痛みが中心なら整形外科になる。しびれや脱力、言葉や視覚の異常があるときは、脳神経外科や救急も選択肢に入る。
市販のお灸を使っていて、思っていたのと違う反応が出たときも同じになる。熱さの感じ方には個人差があり、皮膚の状態によっても変わる。異常を感じたら中止して、必要なら医療機関へ。使い方については、必ず製品に付いている使用上の注意を読んでほしい。
もう一つ。施術のあとに症状が強くなったとき、「好転反応だから大丈夫」と説明されることがある。その説明を、受診を先延ばしにする理由にしないでほしい。強い症状、続く症状、増していく症状は、様子を見る対象ではない。
では、なぜ両方取るのか
灸だけを受けに来る人がいないのなら、灸の免許は要らないのか。そうは思わない。
現場を見ていると、お灸だけで施術をしている人はほとんどおらず、鍼にプラスして灸も使う、という人が多い。 灸は、単独で選ばれることは少なくても、鍼と一緒に使われている。
私自身は、組み合わせたほうがよい場面があると考えている。ただしこれは、12年の臨床の中で私がそう感じてきたという話であって、効果を保証するものではないし、誰にでも当てはまると言えるものでもない。効果について何かを断定するには、この記事が持っている材料では足りない。
そのうえで、制度の側の話をする。はり師ときゅう師は、同時に取れる資格になっている。学ぶ課程も、二つを並行して進む形になっていることが多い。だとすれば、二つとも取るほうがいい、というのが私の考えになる。片方だけだと、現場で使える手が単純に一つ減る。
ここで、この記事の全体が一つにつながる。
法律は、鍼と灸を二つに分けた。免許を分け、試験を分け、実際に片方だけ受かる人まで出る。ところが現場では、その二つを一人が両方持って、一緒に使っている。
分けたことと、合わせて使うことは、矛盾しない。 分けたのは、違うものだからだ。合わせて持つのも、違うものだからこそ、手が増えるからになる。
「鍼灸師」という通称が定着したのにも、たぶんここに理由がある。制度が分けたものを、現場では一人が両方持っている。その人を呼ぶ言葉が要る。法律に無いその一語が、生活の側で使われ続けているのは、そういうことだと思っている。
まとめ
「鍼灸」の読み方が揺れるのは、二つの別々のものを一語にまとめた言葉だからだ。「しんきゅう」は音読み同士、「はりきゅう」は訓読みと音読みの混ざり。どちらも使われていて、どちらでも通じる。
そして、その二つは今も分かれている。あはき法が置いている免許の名前は「はり師」と「きゆう師」で、「鍼灸師」という語は、この法律の条文に一度も出てこない。試験も分かれていて、片方だけ受かる人が実際にいる。
それでも、灸だけを受けに来る人は、ほとんどいない。制度は分けたが、市場は分けなかった。理由は灸が劣っているからではなく、自分でできてしまうからだ。
通称であることは、使ってはいけないという意味ではない。私も「鍼灸師」と名乗る。免許そのものを書く場所でだけ、「はり師」「きゅう師」と書けばいい。
法律は、鍼と灸を二つに分けた。免許も、試験も、別々にした。ではその免許で行う施術に、健康保険は使えるのか。整骨院の窓口が数百円で済むことについては前に書いたが、鍼灸はまた事情が違う。次は、そこを見ていく。
よくある質問(FAQ)
Q. 鍼灸の読み方は「しんきゅう」ですか、「はりきゅう」ですか?
A. 「しんきゅう」と読みます。「はりきゅう」も広く使われていて、間違いではありません。「しんきゅう」は鍼(シン)と灸(キュウ)の音読みを続けた読み方、「はりきゅう」は鍼を訓読みの「はり」、灸を音読みの「キュウ」で読んだもので、訓読みと音読みが混ざった湯桶読みにあたります。予約の電話などでは、どちらを使っても通じます。
Q. 鍼灸院の読み方は?「美容鍼灸」は何と読みますか?
A. 鍼灸院は「しんきゅういん」と読みます。「はりきゅういん」と読む人もいて、こちらも通じます。美容鍼灸は「びようしんきゅう」です。なお、鍼だけを指すときは「びようしん」とも「びようばり」とも呼ばれていて、同じ字でも、語によって読みが揺れます。本文に書いたとおり、「鍼」には音読み(シン)と訓読み(はり)の両方があるためです。
Q. 「鍼灸師」の読み方は? 国家資格としての正式な名称は何ですか?
A. 「しんきゅうし」と読みます。「はりきゅうし」も使われます。ただし「鍼灸師」は、法律上の資格名ではありません。あはき法(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律)の全文を検索しても、「鍼灸師」という語は一度も出てきません。法律が置いている免許の名称は「はり師」と「きゆう師」で、正式名称と第一条ではこの表記になります。これは「鍼灸師は国家資格ではない」という意味ではありません。はり師・きゅう師という2つの国家資格は実在し、「鍼灸師」は、その両方を持つ人を指す通称になります。履歴書などで免許そのものを書く場所では、「はり師」「きゅう師」と書きます。
Q. はり師ときゅう師、片方だけ合格することはありますか?
A. あります。私が受けたときは、共通の問題があり、そのうえではり師の問題ときゅう師の問題があって、合計点で合否が決まる形でした。鍼と灸の専門部分の点数によっては、片方だけ取得できて、片方は落ちる、ということが起こります。制度上ありうるという話にとどまらず、はり師だけ受かってきゅう師は落ちた人、その逆の人を、私は実際に見たことがあります。なお、試験の実施方法は変わることがありますので、受験に関わる情報は試験実施機関の最新の公表資料をご確認ください。
Q. お灸だけを受けることはできますか?
A. きゅう師の免許を持つ人が行うものですので、制度の上では可能です。ただし実際には、お灸だけを希望して来られる方を、私の臨床ではほとんど見かけません。自分でできるお灸が市販されていることが大きいと考えています。多くの場合は、鍼に灸を組み合わせる形で使われています。なお、市販品を使うときは、製品に付いている使用上の注意に従ってください。
本記事の位置づけ
本記事は、e-Gov法令検索から取得したあはき法の条文データ、漢字の音訓についての辞典類、検索キーワードの実測データ、および執筆者自身が4つの国家資格を持ち、はり師・きゅう師として臨床にあたってきた経験に基づいて作成したものです。
本文中の「あはき法の全文を検索すると『鍼灸師』という語は一度も出てこない」という記述は、e-Gov法令検索から取得した同法の条文データ(2026年9月22日取得)を全文検索した結果であり、範囲は同法1本に限られます。 他の法令・省令・告示等を網羅的に調べたものではありません。また、これは「鍼灸師は国家資格ではない」という意味ではなく、はり師・きゅう師という2つの国家資格は実在します。
「きゆう師」「マツサージ」といった表記は、昭和22年当時の法令の表記がそのまま用いられているものを、原文どおりに引用したものです。本文で「大きい『ゆ』」と述べているのは、法律の正式名称と第一条についてであり、同法の条文全体で表記が一つに統一されていることを述べたものではありません。
国家試験の仕組みについての記述は、執筆者自身が受験した経験に基づくものです。試験の実施方法や出題の構成は変わることがありますので、受験に関わる情報は、必ず試験実施機関の最新の公表資料をご確認ください。本記事は受験対策・進路選択の助言を目的としたものではありません。
「片方だけ合格した人を見たことがある」「お灸を希望して来られる方はほとんどいない」といった記述は、執筆者の臨床の範囲で観察された事柄であり、統計的な調査に基づくものではありません。執筆者が見ている範囲には偏りがあることを、本文中に明記しています。
本記事は、特定の施術によって症状が改善することを保証するものではなく、医療行為・診断に代わるものでもありません。症状の判断や、施術を受けるかどうかの判断が必要な場合は、医療機関にご相談ください。法律相談を目的としたものでもありません。
制度・情報は執筆時点(2026年9月22日確認)のものです。
参考文献・出典
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執筆者
山﨑駿(やまざき しゅん)
あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師(すべて国家資格)/Doctor of Chiropractic(D.C.、Tokyo College of Chiropractic・CCEA認可課程)/オステオパシー(D.O.課程)専攻中。臨床歴12年、のべ数万人の身体に向き合ってきた施術者です。
【学歴】日本工学院八王子専門学校 柔道整復科 卒業/東京呉竹医療専門学校 鍼灸あん摩マッサージ指圧科 卒業/東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧RMITカイロプラクティック学科日本校)卒業/日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科 卒業/スティル・ジャパン・アカデミー(オステオパシー専門教育)在学中。
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