鍼灸に保険は使える?6つの疾病と、使えない3つの場合

使える。

ただし、条件がある。対象になる疾病が決まっていて、保険医から同意書の交付を受ける必要がある。だから「使える」と「実際に使えた」のあいだには、一段ある。

前回、はり師ときゅう師は別々の免許だと書いた(鍼灸の読み方は「しんきゅう」?免許が2つある理由)。ではその免許で行う施術に、健康保険は使えるのか。この記事は、その続きになる。

そして、この記事で書きたいのは、使えるかどうかだけではない。使ったときに、何が変わるのか。 触れられる範囲も、一回にかけられる時間も、保険の中では決まってくる。そこまで見て、はじめて選べると思っている。

厚生労働省の資料の原文から、順にたどっていく。

目次

保険の対象は、6つの疾病

厚生労働省が令和7年4月に出している資料に、はり・きゅうの療養費の対象について書かれた箇所がある。まず、そこを原文のまま引く。

ア 神経痛、リウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症について、保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合は、保険者は保険医による適当な治療手段のないものとし療養費の支給対象として差し支えないものとされています。

一文が長いので、並んでいるものを取り出す。同意書には病名を記入する欄があり、この6つはそこに1番から6番まで並んでいる。

番号 疾病名
1 神経痛
2 リウマチ
3 頸腕症候群
4 五十肩
5 腰痛症
6 頸椎捻挫後遺症

この番号は、私が振ったものではない。資料には「同意書(はり及びきゅう療養費用)」の様式そのものが載っていて、病名欄に、この順で番号が印刷されている。3番については、こういう一行も添えられている。

※同意書の「病名」欄の「3.頸腕症候群」を「3.頸肩腕症候群」に変更して差し支えありません。

「頸椎捻挫後遺症」は、一般に「むち打ち」と呼ばれるものの後遺症について使われる病名になる。自分の症状がどれにあたるかを判定するのは、この記事ではなく、同意書を書く保険医のほうだ。

そして、ここからが大事になる。

この6つが、すべてではない。 資料には続きがある。

イ ア以外の疾病による同意書が提出された場合は、記載内容等から保険医による適当な治療手段のないものであるか支給要件を保険者が個別に判断し、支給の適否が決定されます。

※同意書の「病名」欄の「7.その他」に病名を記入願います。

同意書の病名欄には、「7.その他」という欄が実際にある。様式には、こう注記されている。

※1~6は、当てはまるものに○をつけて下さい。
7は、慢性的な疼痛を主訴とする疾病で鍼灸の施術に同意する病名を記載下さい。

6つの外にある病名を書き込む場所が、様式として用意されている。そこに何を書くのかまで、指示されている。

だから、この6つの読み方はこうなる。「これだけ」ではなく、「ここに入っていれば、保険者の個別の判断を経ずに通る枠」。 6つの外へ出ると道が閉じるのではなく、判断が一つ増える。

よく「鍼灸の保険は6つの疾病だけ」と説明されるし、私もそう理解していた。原文を最後まで読むと、「だけ」は付けられない。付けてしまうと、7番の欄に自分の病名を書いてもらえたかもしれない人を、入口の手前で帰すことになる。

この6つには、はり師として働く話を書いたときにも一度触れた(鍼灸師はやめとけ?現役はり師が語る唯一無二の価値)。あのときは「そういう決まりがある」と書いただけだった。この記事では、決まりの中身を見ていく。

条件は「保険医による適当な治療手段のないもの」

6つの疾病を並べたが、疾病名だけで決まるわけではない。その手前に、療養費が支給される疾病そのものの定義が置かれている。

① 療養費の支給対象となる疾病は、慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないものです。

この一文が、この記事でいちばん読み解きたいところになる。

保険が開く条件は、「効くと認められたこと」ではない。 文言のどこにも、効果の話は出てこない。書かれているのは、保険医の側に適当な治療手段がない、と判断されたときということだけだ。

誰が判断するのかも、文言に書いてある。保険医だ。先ほどのアにも「保険医より同意書の交付を受けて」とあった。保険の入口を開けるのは、施術をする側ではなく、医療機関の側という構造になっている。

資料には、保険医が何を見て同意するのかについても、注が付いている。

※保険医は、6疾病と同一範ちゅうと認められる疾病である場合、慢性的な疼痛を主症とする疾患である場合に同意することとなります。

これはイ、つまり6つの外にある病名についての注になる。6つと同じ範囲に入ると認められるか、慢性的な痛みが主な症状か。見られているのは、そこになる。

ここで、以前書いた記事とつながる。

「カイロプラクティックは効くのか」を扱ったとき、問いの立て方そのものに足りないところがあるという話を書いた(カイロプラクティックは効果ない?4回で方針を変える理由)。同じことが、ここでも起きている。

「保険が使える=効果が公に認められた」と読みたくなるが、制度はそう言っていない。制度が見ているのは、医療の側に手段が残っているかどうかのほうだ。効くか効かないかを判定する仕組みとして、この条文は書かれていない。

誤解のないように、はっきり書いておく。

これは「医療が匙を投げた人が鍼灸に来る」という話ではない。 医療を低く見る話でもないし、鍼灸を持ち上げる話でもまったくない。要件の文言がそうなっている、というだけのことになる。支給の可否を決めるための線であって、施術の値打ちを測る線ではない。

もう一つ、読み落とされやすい条文がある。定義には「慢性病」と書かれているのに、資料にはこう続く。

ウ ア及びイの疾病については、慢性期に至らないものであっても差し支えないものとされています。

ア(6つの疾病)とイ(それ以外で同意書が出されたもの)については、慢性期に至っていなくてもよい、とされている。定義の側は「慢性病」と言い、運用の側はそこを緩めている。

条文は、一行だけ読むと厳しく見え、最後まで読むと少し形が違って見える。この記事で何度も出てくるのは、その形になる。

だから、先に医療機関にかかることになる

ここまでで、一つはっきりしたことがある。

保険を使って鍼灸を受けたい人は、先に医療機関にかかることになる。 同意書を書けるのは保険医だからだ。資料にも、こう注がある。

※保険医は、患者の疾病が6疾病である場合に同意することとなります。

同意書という仕組みそのもの——有効期間や、期間を超えたときの再同意の手続き——は、訪問マッサージの記事で厚生労働省の資料から詳しく書いた(訪問マッサージは違法なのか?同意書が支える仕組み)。手続きの中身を知りたい方は、そちらを読んでいただくほうが早い。この記事で扱うのは、同意書に何が書かれるかのほうになる。

そのうえで、構図として見てほしいことがある。

この制度は、受診を先に要求している。 手続き上の順番として、そうなっている。保険を使うつもりなら、まず医師に診てもらうところから始まる。

これは、手間が増えるという話に見えるかもしれない。だが、順番としては、悪くないと思っている。体に起きていることを一度医療機関で見てもらってから、施術に入る。その順番が、制度の側から先に決まっている、ということになる。

そして、制度がそうなっていることとは別に、受診を先に置かなければならない場合がある。

こんなときは、医療機関へ

次のような症状があるときは、鍼にも灸にも行く前に、まず医療機関を受診してほしい。

  • 手足のしびれが続いている、力が入らない
  • ろれつが回らない、顔や体の片側の感覚がおかしい
  • これまでに経験したことのない強い頭痛
  • めまい、ふらつき、ものが二重に見える
  • 症状が日を追って強くなっていく

こうしたものは、一般にレッドフラッグサイン(危険を知らせる兆候)と呼ばれる。何科にかかるかは症状による。首や腰の痛みが中心なら整形外科になる。しびれや脱力、言葉や視覚の異常があるときは、脳神経外科や救急も選択肢に入る。

もう一つ。施術のあとに症状が強くなったとき、「好転反応だから大丈夫」と説明されることがある。その説明を、受診を先延ばしにする理由にしないでほしい。強い症状、続く症状、増していく症状は、様子を見る対象ではない。

なぜ「使えると聞いたのに使えなかった」が起きるのか

「鍼灸に保険が使える」と書いてあるのを見て行ってみたら、自費だった。この食い違いが、「鍼灸 保険」と調べられているいちばんの理由ではないかと思う。

原文から読める範囲で、使えない場合を3つ挙げる。どれも、資料の文言に裏づけのあるものに限った。

1. 対象の疾病にあたらない

先に引いたイのとおり、6つの外にある病名でも、同意書が出されれば保険者が個別に判断する。判断するということは、認められないこともあるということになる。

日常的な肩こりや、疲れているから受けておきたい、という目的は、ここに入ってこない。6つの疾病も、その外の個別判断も、見ているのは「保険医による適当な治療手段のないもの」かどうかのほうだからだ。

2. 保険医の同意書が無い

アにあるとおり、支給の対象になるのは「保険医より同意書の交付を受けて施術を受けた場合」になる。

施術そのものは、同意書が無くても受けられる。はり師・きゅう師の免許は、医師の同意が無ければ鍼を打てない、というものではない。同意書が要るのは、費用の一部を保険から払い戻してもらうときの話になる。ここは混ざりやすいので、分けておきたい。

3. 同じ疾病について、医療機関で治療を受けている

これがいちばん見落とされやすい。原文を、除外の括弧ごと引く。

② 同意する疾病について、処置や投薬等の治療(ただし、同意書の交付に必要な診察・検査及び療養費同意書交付は除く。)を行う場合には、治療が優先されるため、患者は、はり、きゅうの療養費の支給を受けることができません。

同じ病気について、医療機関で処置や投薬を受けている間は、その病気についての鍼灸の療養費は支給されない。 治療が優先される、と書かれている。

ここで、括弧の中を飛ばさないでほしい。同意書の交付に必要な診察・検査と、同意書の交付そのものは、除かれている。

だから、正しい読み方はこうなる。

  • 同意書をもらいに医療機関へ行くこと自体は、併用にあたらない。 それは制度の入口であって、制度が先に要求していることになる
  • そこから先、同じ病気について治療が始まれば、そちらが優先される

前の章で「制度は受診を先に要求している」と書いたことと、矛盾しない。行くなと言っているのではなく、順番と優先順位が決まっている、ということになる。

念のため、はっきり書く。この条文を「病院に行くと保険が使えなくなるから、病院に行かないほうがいい」と読まないでほしい。 そういう制度ではないし、私もそういう意味で書いていない。必要な治療は、受けてほしい。

費用について、この記事が書けること

「鍼灸 保険 料金」という言葉もよく調べられている。ただ、この記事では金額を書かない。

書かないのは、隠しているからではない。保険で受ける分の算定額そのものは、厚生労働省の通知で決まっていて、公表されている。 だから、この枠の中には、いわゆる相場というものが無い。変わるのは、算定された額のうち、いくらを窓口で払うかのほうで、そこは加入している保険によって違う。私が示せないのは、そちらになる。

だから、こう書くにとどめる。金額は、受ける前に、施術所と、加入している保険者に確認してほしい。 それがいちばん確かな方法になる。

そのうえで、一つだけ。「保険が使えるからお得」という選び方を、この記事は勧めない。理由は、次の章になる。

保険を使うと、何が変わるのか

保険を使うことはできます。 これが、この話をするときの私の最初の一言になる。

そのうえで、使うと何が変わるのかを書く。ここから先は、資料の文言ではなく、私自身が現場で見ていることになる。

先に断っておきたいことがある。私は施術をしている立場で、自由診療も提供している。だから、これから書くことが「保険はやめて自費にしましょう」と言っているように読まれるかもしれない。そうではない。 書いているのは、選ぶ前に知っておける事実のほうだ。どちらがよいかは、受ける人が決めることになる。

触れられる範囲と、時間が決まってくる

保険で受ける場合、対象になっている疾病についての施術が、支給の対象になる。 それ以外の施術は、その枠の中に入らない。

ここから、実際の一回がどうなるかが決まってくる。時間は短くなる。できる範囲や部位も限られてくる。腰痛症で同意書が出ているなら、見ていく中心は腰になる。首も肩も気になるので全部お願いします、という受け方には、ならない。

触れられる範囲が、先に決まっている。 これが、保険を使うということの実際の形になる。

誤解してほしくないのは、これが「手を抜く」という意味ではないことだ。公的なお金を配るには、どこまでが対象かという線が要る。 線があるから、支給の可否を誰が見ても同じように判断できる。範囲が決まるのは、その線の裏側になる。

制度が悪いのではない。制度には形がある、というだけのことだと思っている。

ただし、回数や頻度は変わらない

ここは、誤解されやすいので分けて書いておきたい。

回数や頻度そのものは、変わらない。 少なくとも私の実務では、保険を使うからといって、通っていただく回数を減らすとか、間隔を空けてもらうといったことはしていない。

変わるのは、一回の中の話になる。触れられる範囲と、かけられる時間。そこであって、通い方のほうではない。

「保険を使うと何もかも制限される」というのは、言い過ぎになる。変わるところと、変わらないところがある。 そこを分けずに話すと、実際より狭い制度に見えてしまう。

同意書を持って来られる方は、1割ほど

では、実際にどれくらいの方が保険を使っているのか。

私の体感としては、同意書をもらってきてくださる方は、全体の1割程度にとどまっています。

この数字は、統計ではない。私が現場で受け取っている感覚の話で、業界全体の割合でもない。それでも、書いておく価値があると思っている。残りの9割がどういう理由でそうなっているかが、この章のいちばんの中身になるからだ。

同意書を持ってこられる方も、もちろんいる。かかっている医師に相談して、そこから話が進む方もいる。施術所が医療機関と連携していて、紹介を通じて同意書が出る、という形もあると聞く。道が無いわけではない。

そのうえで、保険を使わない方に理由を聞くと、返ってくる言葉は、私が思っていたものと違っていた。

手続きが面倒だから諦める、という話ではない。「全身やってもらいたい」という理由で、自由診療を選ばれる方が多い。

ここで、話が反転する。

制度のハードルの話ではなく、人が何を選んでいるかの話になっている。そして選んでいる理由が「全身やってもらいたい」だとすれば、それは、保険が線を引いた場所と、体が困っている場所が一致していないということになる。

腰だけ、肩だけを見ていれば足りる、とは限らない。体は、部位ごとに切り分けられて動いているわけではない。

これは、制度の欠陥ではない。保険は6つの疾病に線を引いた。体は、その線で区切られていない。 ただそれだけのことで、どちらも間違っていない。

線を引けば、その外側が出てくる。だから、どちらを選ぶかという話になる。どちらが良いかではなく、何が変わるかを知ったうえで選べる。 この章で書きたかったのは、そこになる。

柔道整復・あん摩マッサージ指圧とは、どう違うのか

最後に、他の免許と並べておきたい。施術について免許制度が置かれているのは4つだけで、そのすべてに、保険との関わりがある。

免許 対象の決め方
柔道整復師 外傷(けが)
あん摩マッサージ指圧師 症例(診断名によらない)
はり師・きゅう師 疾病(6つ+個別の判断)

柔道整復師には、受領委任という別の仕組みがある。窓口で自己負担分だけを払えばよいのは、この仕組みによる(整骨院の保険はなぜ500円?受領委任という仕組み)。

なお、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうにも受領委任という仕組みがあること自体は、訪問マッサージの記事で触れた。ただし柔道整復のそれとどう違うのかは、今回確認した資料の範囲では確かめられなかったので、この記事では踏み込まない。

見てほしいのは、右の列になる。同じ「保険が使える施術」でも、何を対象にするかの決め方が、免許ごとに違っている。

同じ資料の中で、あん摩マッサージ指圧の対象は、こう書かれている。

① 療養費の支給対象となる適応症は、一律にその診断名によることなく、筋麻痺・筋萎縮・関節拘縮等、医療上マッサージを必要とする症例です。

「一律にその診断名によることなく」。 はり・きゅうが病名で線を引いているのに対して、あん摩マッサージ指圧は、診断名ではなく症例で線を引いている。同じ一つの資料の中で、線の引き方が逆になっている。

つまり、こうなる。

  • 柔道整復師:けがという、起きた出来事で線が引かれる
  • あん摩マッサージ指圧師:診断名によらず、どういう状態かで線が引かれる
  • はり師・きゅう師:病名で線が引かれる

前回の記事で、はり師ときゅう師は別々の免許だと書いた。今回分かったのは、その先になる。4つの免許は、保険の入口まで別々だった。 同じ「保険が使える施術」という言葉の下で、開く条件が三通りある。

保険が使えるかどうかを、施術の格の話だと読みたくなる。だが、並べてみると、そういう順位ではないことが分かると思う。何に対してお金を出すのかを、制度がそれぞれ別の言葉で決めている、というだけのことになる。

まとめ

鍼灸に健康保険は使える。厚生労働省の資料が具体的に挙げているのは、神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症の6つ。それ以外の病名でも、同意書が出されれば保険者が個別に判断する。

条件は「慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないもの」。効くと認められたから使えるのではなく、保険医の側に適当な手段がないと判断されたときに開く、という書かれ方になっている。

使えないのは3つ。対象の疾病にあたらないとき。同意書が無いとき。同じ病気について処置や投薬を受けているとき。ただし3つ目には除外があり、同意書をもらうための診察・検査は、これに含まれない。 病院に行くなという話では、まったくない。

そして、使えるかどうかの先がある。保険の中では、触れられる範囲と時間が決まってくる。回数や頻度は変わらない。同意書を持って来られる方は、私の体感で1割ほど。残りの方の多くは、諦めたのではなく「全身やってもらいたい」という理由で自由診療を選んでいる。保険は6つの疾病に線を引いた。体は、その線で区切られていない。 どちらも間違っていない。

制度は変わることがある。実際に使うときは、加入している保険者と施術所に確認してほしい(2026年9月23日時点で確認)。

この記事では、はり師ときゅう師の療養費を見た。保険医の同意書が要るという点では、あん摩マッサージ指圧師の療養費と同じ仕組みになっている。ただしその「あん摩マッサージ指圧師」という免許は、一つの免許でありながら、名前が三つ入っている。あん摩と、マッサージと、指圧。同じものの言い換えなのか、それとも別々のものなのか。次は、そこを見ていく。

よくある質問(FAQ)

Q. 鍼灸に健康保険は使えますか?

A. 使えます。ただし療養費という仕組みで、条件があります。厚生労働省の資料(令和7年4月版)では、支給対象となる疾病は「慢性病(慢性的な疼痛を主訴とする疾病)であって保険医による適当な治療手段のないもの」とされ、保険医から同意書の交付を受けたうえで施術を受けた場合が対象になります。施術そのものを受けるのに同意書が要るという意味ではなく、費用の一部を保険から払い戻してもらうための条件になります。

Q. 保険の対象になるのは、どんな症状ですか?

A. 資料が具体的に挙げているのは、神経痛・リウマチ・頸腕症候群・五十肩・腰痛症・頸椎捻挫後遺症の6つです。ただし、この6つに限られるわけではありません。資料には「ア以外の疾病による同意書が提出された場合は、記載内容等から保険医による適当な治療手段のないものであるか支給要件を保険者が個別に判断し、支給の適否が決定されます。」と続いており、同意書の病名欄にも「7.その他」があります。6つは「ここに入っていれば個別の判断を経ずに通る枠」と読むのが正確です。

Q. 病院に通いながら、鍼灸で保険を使えますか?

A. 同じ病気について処置や投薬等の治療を受けている間は、使えません。資料は「治療が優先されるため」と書いています。ただし、ここには除外があります。「ただし、同意書の交付に必要な診察・検査及び療養費同意書交付は除く。」とされており、同意書をもらうために医療機関で診察や検査を受けること自体は、これにあたりません。 つまり「病院に行くと使えなくなる」という意味ではなく、同じ病気の治療が始まればそちらが優先される、ということになります。必要な治療は受けてください。

Q. 保険を使う場合、費用はどれくらいになりますか?

A. 保険で受ける分の算定額は、厚生労働省の通知で決まっていて、公表されています。ただしこの記事では、窓口でいくらになるかは書きません。算定された額のうち、いくらを窓口で払うかは、加入している保険によって変わるからです。受ける前に、施術所と、加入している保険者に直接確認してください。それがいちばん確かな方法になります。

Q. どの鍼灸院でも保険が使えますか?

A. この点について、今回確認した厚生労働省の資料には記載がありませんでした。療養費を取り扱っているかどうかは施術所によって異なる可能性がありますので、受けたい施術所に直接ご確認ください。取り扱っていない施術所を、この記事は批判するものではありません。

本記事の位置づけ

本記事は、厚生労働省が公表しているはり・きゅう及びあん摩マッサージ指圧の療養費に関するリーフレット(令和7年4月版)のPDFを直接取得し、その原文を参照して作成したものです(2026年9月22日取得)。本文中の引用は、いずれも同資料の文言をそのまま引いたものです。

本文で用いている「保険医による適当な治療手段のないもの」という表現は、この令和7年4月版の資料に基づくものです。同趣旨の要件は古い通知にも置かれていますが、通知本体は今回確認していないため、本記事では現行の資料の表現に統一しています。

「6つの疾病」については、資料が具体的に挙げているものとして紹介しています。資料には、これ以外の疾病について保険者が個別に判断するという規定が続いており、本記事はこれを「6つだけが対象」という意味では述べていません。

「同意書を持って来られる方は1割ほど」「全身やってもらいたいという理由で自由診療を選ばれる方が多い」といった記述は、執筆者が自身の臨床の範囲で受け取っている体感であり、統計的な調査に基づくものではありません。 業界全体の割合を示すものでもありません。執筆者は施術者であり自由診療も提供していますが、本記事は保険診療・自由診療のいずれかを推奨するものではありません。

施術料の算定額は厚生労働省の通知で公表されていますが、窓口での負担額は加入している保険によって変わるため、本記事では金額を記載していません。支払いの方法や負担額は、加入している保険者および施術所にご確認ください。療養費を取り扱っていない施術所について、本記事は批判・推奨のいずれも行いません。

本記事は、特定の施術によって症状が改善することを保証するものではなく、医療行為・診断に代わるものでもありません。症状の判断や、施術を受けるかどうかの判断が必要な場合は、医療機関にご相談ください。法律相談・保険給付に関する相談を目的としたものでもありません。

制度・情報は執筆時点(2026年9月23日確認)のものです。制度は改定されることがあります。

参考文献・出典

  • 厚生労働省「はり、きゅう及びあん摩マッサージ指圧の同意書の取扱いを改めてお知らせします」(令和7年4月版):PDF ※PDFを直接取得し、原文から引用(2026年9月22日取得)
  • 厚生労働省保険局長「はり師、きゅう師及びあん摩・マッサージ・指圧師の施術に係る療養費の支給について」(保発0605第8号・令和8年6月5日/令和8年7月1日以降の施術分から適用):PDF ※施術料の算定額を定めた通知(2026年9月23日取得)
  • あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(昭和22年法律第217号):e-Gov法令検索
  • 検索キーワードの実測データ(2026年9月22日取得)※「鍼灸 保険適用」等の推定月間検索数。学術的な調査ではなく、検索需要の実測値です
  • 執筆者自身の臨床12年の中での観察(2026年9月)

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執筆者

山﨑駿(やまざき しゅん)

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師(すべて国家資格)/Doctor of Chiropractic(D.C.、Tokyo College of Chiropractic・CCEA認可課程)/オステオパシー(D.O.課程)専攻中。臨床歴12年、のべ数万人の身体に向き合ってきた施術者です。

【学歴】日本工学院八王子専門学校 柔道整復科 卒業/東京呉竹医療専門学校 鍼灸あん摩マッサージ指圧科 卒業/東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧RMITカイロプラクティック学科日本校)卒業/日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科 卒業/スティル・ジャパン・アカデミー(オステオパシー専門教育)在学中。

保有資格の詳細は運営者プロフィールをご覧ください。

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