整骨院と接骨院の違いは?法律が使う名前は1つだけ

違いはない。どちらも柔道整復師が開く施術所で、施術の内容も、資格も、保険の扱いも同じである。だから、看板の名前を見比べても、そこから差は出てこない。

答えとしては、ここで足りている。ただ、「呼び名が違うだけ」で片づけてしまうと、見えなくなるものがある。柔道整復師法の全文を検索しても、「整骨院」も「接骨院」も出てこない。 法律が使っている言葉は「施術所」である。

では、院の名前はどこで決まっているのか。広告できる事項を定めた、厚生労働大臣の告示だ。そして「接骨」は昭和47年にそこへ加えられ、「整骨」は加えられなかった。

私は柔道整復師の免許を持っている。この記事では、法律 → 告示 → 実態 → 最新の指針という順で、原典を出しながら見ていきたい。

目次

法律には、どちらの名前も書かれていない

法律が使っているのは「施術所」という言葉だけ

柔道整復師について定めているのは、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)である。免許のこと、業務のこと、施術所の届出のことが、この1本の法律に書かれている。

その全文を検索した。e-Gov 法令検索から法令のデータをそのまま取得して、語を探した。結果はこうなる。

「整骨院」は出てこない。「接骨院」も出てこない。「整骨」「接骨」「ほねつぎ」も出てこない。

代わりに、繰り返し出てくる言葉がある。「施術所」である。開設の届出も、休止も、廃止も、この言葉で書かれている。

確認したのは柔道整復師法の1本だけで、ほかの法律まで全部調べたわけではない。ただ、柔道整復師の仕事と施術所について定めた法律を読んでも、多くの人が違いを調べているその2語は、どちらも出てこない。

ここで、順序を逆にして考えたい。読者が使っている言葉が法律に無いのなら、その言葉は別のどこかで決まっているということになる。

では、院の名前はどこで決まっているのか

柔道整復師法の中で、名前に関係する条文が一つある。広告の制限である。

(広告の制限)第二十四条 柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。
一 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
二 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
三 施術日又は施術時間
四 その他厚生労働大臣が指定する事項

この条文の形に注目してほしい。「これを書いてはいけない」という作りではない。「次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない」——つまり、書けるものを数え上げて、それ以外は書けないという作りになっている。

数え上げられているものを見てほしい。柔道整復師である旨と氏名・住所、施術所の名称と電話番号と所在の場所、施術日と施術時間。それだけである。そして第二号は「施術所の名称」と書いてあるだけで、どういう名称なら書けるのかについては、何も言っていない。

そして、四つ目が「その他厚生労働大臣が指定する事項」である。名前の話は、ここから先に落ちている。 法律本体は「厚生労働大臣が指定する」と書いただけで、何を指定するかは書いていない。その指定は告示で行われる。

だから、柔道整復師法を読んで「整骨院」「接骨院」が出てこないのは、当然だった。そこは、法律が名前を決めている場所ではなかったということになる。

誤解のないように書いておくと、これは名前がいい加減に使われているという話ではない。決めている場所が、法律ではなかったという話である。 条文の書き出しも「柔道整復の業務又は施術所に関しては」となっていて、法律が見ているのは免許を持つ人と、その施術所のほうだ。看板に何と書くかは、そのあとに来る。

同じことが、鍼灸でも起きている。あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の全文を検索しても、「鍼灸師」という語は出てこない。その話は別に書いた(鍼灸の読み方は「しんきゅう」?免許が2つある理由)。読者が使っている言葉と、制度が使っている言葉は、はじめからずれている。

「接骨」は昭和47年に加えられ、「整骨」は加えられなかった

では、その告示には何が指定されてきたのか。厚生労働省の検討会に出された資料(第9回・令和5年2月13日。同じ表は第11回の資料にも再掲されている)が、広告し得る事項の変遷をまとめている。以下はその資料によるもので、告示そのものを私が読んだわけではない。

年 広告できる名称・事項
昭和45年 ほねつぎ
昭和47年 ほねつぎ(又は接骨) ←「接骨」が加えられた
平成11年 上記+療養費の支給申請ができる旨/予約に基づく施術/休日又は夜間の施術/出張による施術/駐車設備
平成28年 上記+柔道整復師法第19条第1項前段の規定による届出をした旨

資料の書き方を、そのまま引く。

○ 当時、大臣が指定する事項は「ほねつぎ」のみであった。

○ 広告し得る事項に「接骨」が加えられた。

昭和45年、つまり法律ができた年に指定されていた名称は、「ほねつぎ」だけだった。古い看板に「ほねつぎ」と書いてあるのを見かけることがある。あれは、いちばん最初に指定された名称である。そして現行の指針にも、この語は残っている。

ここで、もう一つ気づくことがある。法律が定めている資格の名前は「柔道整復師」なのに、広告できる名称として最初に指定されたのは「ほねつぎ」だった。資格の名前と、看板に出す名前は、はじめから別のものだった。

分かれ目は昭和47年だ。ここで「接骨」が加えられた。そのあとの追加は、療養費や予約・出張といった名称以外の事項で、名称については昭和47年の形が続いている。平成28年に加わったものも名称ではなく、柔道整復師法第19条第1項前段の規定による届出をした旨、つまり「届出をしている」という事実を広告できる、という項目である。

では、今はどうなっているのか。最新の指針にも、柔道整復について広告できる事項が並んでいる。厚生労働大臣が指定する事項として挙がっているもののうち、はじめの3つを引く。

一 ほねつぎ(又は接骨)
二 柔道整復師法第十九条第一項前段の規定による届出をした旨
三 医療保険療養費支給申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)

四から七は、予約・休日夜間・出張・駐車設備に関する事項である。先頭に置かれている名称は、いまも「ほねつぎ(又は接骨)」のままだ。

では「整骨」はどうなったのか。同じ資料が、一行で書いている。

「整骨」は、告示に規定されていない事項である

「規定されていない」である。「認められていない」ではない。 似て見えるが、別のことを言っている。前者は事実の記述で、後者は評価だ。この記事が書けるのは、前者までになる。

そして、なぜ「整骨」が加えられなかったのかは、資料に書かれていない。理由を、私は知らない。 推測で埋めれば読みやすくなる場所だが、埋めた瞬間に、この記事は原典より一歩先へ出てしまう。

書けるのは、時間の長さのほうだ。名称についての追加は、昭和47年から起きていない。「接骨」が加えられてから半世紀以上、「整骨」は加えられないままきた。 その間に動いていたのは、告示ではなく実態のほうである。

なお私は、これを「行政は『接骨』のほうを想定している」という意味で受け取ってきた。告示に入っているのが「ほねつぎ(又は接骨)」という形だけだからだ。ただし、行政がそれを推奨していると書いた文書を、私は確認していない。受け取り方の話である。

告示に無いのに、なぜ「整骨院」の看板があるのか

ここで実態を見たい。告示に入っているのは「接骨」のほうである。ところが、私が街で見かけてきたのは、「整骨院」という看板のほうが多かった。これは私の実感だが、当事者の団体が出した数字も、同じ方向を向いている。

日本柔道整復師会が検討会(第11回・令和6年7月12日)に出した文書に、こう書かれている。

会員の施術所の名称は、北海道、大阪府、福岡県では95%が「整骨院」であり、さらに、会員全体でみると15,460施術所のうち6,631施術所(42.9%)が「整骨院」である。

この数字は、日本柔道整復師会の会員の施術所についてのものである。全国の施術所全体の割合ではない。地域が3つ挙がっているが、その地域がなぜそうなのかは、文書に書かれていない。だから私も、理由を足さない。

なぜ「整骨院」が多くなったのかについて、同じ文書が書いていることが一つある。「整骨院」での名称の届出が認められてきた、という点だ。届出をすれば、受理されてきたということである。そして団体は、続けて自分の責任を書いている。

これまで「整骨院」は告示には規定されていないことは承知していたが、「整骨院」での名称の届出が認められてきたことから、当会として告示には規定がなく、本来、使用できない名称であることを柔道整復師に周知してこなかったこと、また、開設の届出で認められてきたことに甘え「整骨院」を告示へ追加するよう厚生労働省に働きかけするなど「整骨院」の名称に関して考え方を明確にしてこなかったことに対する責任があると考えている。

自分の非を書いた文書である。 だからこの記事は、「整骨院」を名乗っている施術所を責める側に立てない。届出は受理されてきたのだし、当事者の団体が「周知してこなかった」と書いているのだから。

検討会の資料(第9回)には、届出の数についてこういう意見も載っている。

➢ 調査の結果、「整骨院」の届出と「接骨院」の届出数が均衡しているのを考慮して欲しい。

「均衡している」と言われているその調査の実数を、私は持っていない。 資料にあるのはこの発言だけで、私が確認できた数字は、先ほどの団体の会員についてのものだけである。だから、全国でどちらの届出が多いのかを、この記事は言わない。

そして、先ほどの団体の文書には、この記事が存在する理由がそのまま書かれている一行がある。

そもそも「接骨院」、「整骨院」が何をするところなのかがわからないという声をよく聞く

私も同じだった。たくさんの方に聞かれたことがあります。 「整骨院と接骨院って違うんですか」という質問である。団体が「よく聞く」と書いていることと、私が現場で聞かれてきたことは、同じ方向を指している。

私が勤めていたところは、全部「整骨院」のほうだった。3社である。偶然ではない気がします。整骨院という名前にするのが流行っていたというか、当たり前のところであった。 「気がします」「というか」と言っているのは、理由を知らないからだ。なぜそうなったのかは、私にも分からない。

時期についても書いておきたい。12、3年前から整骨院で働いていますが、この業界でもうその当時から既に整骨院という名前で、どんどん店舗が増えていった印象です。 そして、ここ2年はほとんど増えていない。その数字は別の記事に書いた(整骨院の保険はなぜ500円?受領委任という仕組み)。この記事では再掲しない。

最新の指針は、「整骨院」について何と書いているか

ここが、この記事でいちばん誤解されやすいところになる。先に答えを書く。何も書いていない。

検討会(第11回・令和6年7月12日)の資料には、「整骨院」の扱いについて、三つの選択肢が並んでいる。

◆ ガイドラインに、広告可能な名称の例として「整骨院」を記載する
◆ ガイドラインに、広告不可な名称の例として「整骨院」を記載する
◆ ガイドラインには記載しない

そして、この検討会より後に出た最新の指針(令和7年2月18日・厚生労働省)を、全文検索した。「整骨院」という語は、一度も出てこない。 「接骨院」と「ほねつぎ」は出てくる。

ここから先を、慎重に書く。

可とも不可とも書かれていない。三つのうちどれが選ばれたのかを述べた文書は、私は確認していない。確認できるのは、指針にその語が無いという事実だけである。

「記載しない」が選ばれたのかもしれない。まだ決まっていないのかもしれない。どちらかを言う根拠を、私は持っていない。 語が無いという事実から「不可になった」へ進むのは、事実から評価への飛躍になる。

もう一つ、書いておきたいことがある。三つの選択肢が示されたということは、少なくとも令和6年7月の時点では、扱いが決まっていなかったということになる。届出は受理されてきた。告示には規定されていない。そして最新の指針には語が無い。この三つの事実のあいだに何があったのかは、私が読んだ資料からは分からない。 分かっていることと分かっていないことを分けておくのが、ここでできる唯一のことになる。

検討会の資料(第9回)には、出席者の意見も並んでいる。三つ引く。

➢ 「整骨院」という名称は一度も法律の中に出てきていないのだとしたら、この際、「接骨院」であるということに統一する必要があるのではないか。
➢ 「整骨院」という名称に反対である。国民が理解しにくく、整形等と紛らわしい。
➢ 現状では、「整骨院」という届出をされた場合に、受理をしているが、届出制だからそのまま受理せざるを得ないのか。

どれも意見である。決定ではないし、私が賛否を表明する場所でもない。 見たいのは中身ではなく、並び方のほうだ。統一すべきだという意見があり、届出を受理せざるを得ないのかという問いがあり、前の章で見たとおり、届出の数を考慮してほしいという要望もあった。立場は一つではなかった。

だからこそ、指針に語が無いという事実を、私は「結論が出た」とは読まない。意見が分かれたまま、その語が書かれていない。 確認できるのは、そこまでである。

日付も書いておく。2026年9月29日の時点で、厚生労働省のページに掲載されている検討会は第11回までで、私が確認できた最新の指針は令和7年2月18日のものである。掲載されていないことは、開催されていないことの証明にならない。 だから「その後、動きはない」とも書かない。制度は改定される。

名前が違うと、中身も違うのか

ここで、最初の問いに戻る。名前の扱いが違うのなら、中身も違うのか。変わらない。

患者さんに聞かれたとき、私はこう答えてきた。

接骨院と整骨院では、意味合い的には同じです。
施術を提供する場所として名前が違うだけであって、中身はどちらも一緒です。
どちらにも保険が使えますし、骨折・脱臼・打撲・捻挫の治療が可能です。

「意味合い的には」と言っている。言い切っていない。制度上の扱いには、このあと見るとおり一点だけ違いがある。

そして、骨折と脱臼には条件がある。柔道整復師法に、こう定められている。

(施術の制限)第十七条 柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。

医師の同意が要る。 例外は、応急手当をする場合だけである。引用の中の「骨折・脱臼・打撲・捻挫」は、現場で患者さんに説明するときの言い方で、条文が名前を挙げているのは脱臼と骨折のほうだ。「打撲」「捻挫」という語は、柔道整復師法の条文には出てこない。

そして同じ条件は、広告の場面にも出てくる。前の章で引いた広告できる事項の三番目には、「脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る」という括弧が付いていた。施術の場面だけでなく、その旨を広告するときにも条件が付いている。 そしてこの条件は、名前が整骨院でも接骨院でも変わらない。

そのうえで、名前の違いによって変わるものを探すと、こうなる。

項目 名前の違いで変わるか
開設に必要な免許(柔道整復師) 変わらない
業務の範囲 変わらない
療養費(保険)の扱い 変わらない
施術所の届出の手続 変わらない
告示での名称の扱い ここだけが違う

変わるのは、いちばん下の1行だけである。 開設のときに届出をするという柔道整復師法の定めも、療養費の取り扱いも、名称では分かれない。だから、名前は判断材料にならない。整骨院だから、接骨院だから、という理由で中身を推し量ることはできない。

名前の作り方についても、指針は例を挙げている。名前は、自由に作れるものではない。 最新の指針が、広告できる名称の例として示している形の一つが、これである。

エ 施術所が併設されている場合等に併記すること
○○接骨院・鍼灸院、○○接骨院・○○鍼灸院 等

これも、届出をした施術所が、自らの名称を広告する場合の話である。施術所が併設されているときに併記するという形が、例として挙がっている。名前は自由に作れるものではなく、書ける形のほうが先に決まっている、ということになる。

では、何を見て決めればいいのか。その問いは残るが、この記事では答えない。名前の話と、どこにかかるかを決める話は、別のものだからだ。

ここで、自分の記事について一つ書いておきたい。保険が使える仕組みについては、別に詳しく書いた(整骨院の保険はなぜ500円?受領委任という仕組み)。その記事で、私は「整骨院・接骨院」と並記している。 違いを説明する記事を書いておいて並記するのは矛盾のように見えるが、矛盾ではない。同じものだから、並記できる。

柔道整復師という資格そのものについては、別の記事にした(柔道整復師はやめたほうがいい?現場12年で見た実際)。

名前そのものが問題なのか

よくないのは名前ではなく、誤認されることだった

ここまでは、制度の側から見てきた。最後に、現場にいる人間として私が思っていることを書く。名前について私が問題だと思っているのは、「整骨院」という名前そのものではない。

名前の違いであれば問題ないのかなとは感じますが、整骨院なのに整体院の看板を出す、姿勢改善や骨盤矯正といった看板を出してしまうのは、誤認される可能性があるのでよくないことではないかと思われます。

「問題ないのかなとは感じます」「よくないことではないかと思われます」。どちらにも留保が付いている。断定していないのは、個別の名称について判断するのが私ではないからだ。

私が挙げたのは3つになる。整骨院なのに整体院の看板を出すこと。姿勢改善という看板。骨盤矯正という看板。 そして理由は一つだけで、誤認される可能性がある、である。どこかのリストに載っているから駄目、という理由ではない。

そのうえで、指針を見たい。範囲を先に書いておく。これは、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の施術所が、自らの名称を広告する場合についての決まりである。免許を持たない事業者の屋号について定めたものではない。 ここを外すと、まったく別の話になってしまう。

最新の指針(令和7年2月18日)は、広告できない名称の例を8つに分類して挙げている。そのうち2つを引く。

② 広告不可な名称の例
イ あはき、柔整以外の業態と紛らわしい名称
カイロプラクティック、整体、リラクゼーション、リフレクソロジー、アスレチック、コンディショニング、リラックス、サポート 等
(中略)
カ 効能を含んでいる名称、優良な施術所と思わせる名称
姿勢改善、小顔矯正、骨盤矯正、(施術が優良であることを示す意味で)巧み 等

私が挙げた3つが、ここに入っている。ただ、同じなのは単語ではない。 注目してほしいのは、分類の名前のほうである。

私が立てていた基準 指針の分類名
誤認される可能性がある 紛らわしい名称
同上 効能を含んでいる名称、優良な施術所と思わせる名称

紛らわしい、とは誤認されるということだ。 私はこの指針の分類を読んで、あの判断を立てたのではない。現場で看板を見て、患者さんの反応を見て、そう思ってきた。それが、指針が立てている基準と同じ形になっていた。単語が3つ一致したことよりも、基準が一致したことのほうが、意味があると思う。

そして指針は、この分類のあとに、こう付け加えている。

なお、これらの広告不可な表現については、例えば、英語にしたり、一般的に同じ意味と認識される別の用語・呼称を用いる等表現方法を変えても表示は不可であること、また、看板、掲示物及び装飾等を含め施術所外への表示も不可であることに留意すること。

言い換えても同じ扱いになる、と書いてある。 つまり指針が見ているのも、単語そのものではない。別の言葉に置き換えても誤認が残るなら、扱いは変わらない。 ここでも、基準のほうが先に来ている。

一つ断っておく。指針が挙げているのは例である。実際の名称が適法かどうかを判断するのは行政であって、この記事ではない。特定の施術所を違法だと指摘する意図は、まったくない。

なお、「整体」という言葉に定義が無いことは、別の記事に書いた(整体師に国家資格はある?免許があるのは4資格だけ)。定義が無いその言葉が、免許を持つ施術所が名称に使えない例としても挙がっていることになる。ただし、定義が無いことと紛らわしいとされていることが、どうつながっているのかは資料に書かれていない。

新しく名乗ることと、既にある看板は、別の話である

もう一つ、私が分けて考えていることがある。

ここまで何もせず広がってしまったため、もうこれ以上増やさないようにするのは大事だと思いますが、もう既に営業して看板を設置している業者に対して「新しくしなさい」ということになると費用もかかってくるため、現実的ではないような気がします。

これも留保つきだ。「大事だと思います」「現実的ではないような気がします」。そして私は、「整骨院」を不可にすべきだとは言っていない。 増やさない方法はほかにもあるだろうし、どうするかを決めるのは私ではない。

ここで、検討会の資料(第9回)に戻る。これから引くのは決定ではない。事務局が示した論点である。

✓ 柔道整復師の開設する施術所は名称を「整骨院」とすることを不可としてはどうか。
✓ 開設届出済みの施術所については、施術所の移転、看板の掛け替え及び名称の届出事項に変更を行わない限り、当面の間の猶予を認めることとしてはどうか。

そして、前の章で見たとおり、そのあとに出た指針に、この語は入っていない。 論点がそのまま結論になった、という話ではない。

私が書きたいのは、この論点の中身ではなく、形のほうである。

新しく名乗ることについて 既に届出をしている施術所について
私 これ以上増やさないのは大事 変えろというのは費用がかかる。現実的ではない
検討会の論点 名称を「整骨院」とすることを不可としてはどうか 当面の間の猶予を認めることとしてはどうか

同じ分け方である。 新しく名乗ることと、既にある看板を、別の話として扱っている。結論が同じだと言っているのではない。「増やさない」は目的で、「不可とする」は手段の一つだ。そこは別のものである。

ただ、線を引いた場所が同じだった。私は検討会の資料を読まずに、自分の現場から線を引いていた。制度をつくる側と、現場にいる人間が、別々に同じ場所を見ていたということになる。

まとめ

整骨院と接骨院に、違いはない。施術の内容も、資格も、保険の扱いも同じで、違うのは名前の制度上の扱いだけである。

そしてその名前は、どちらも法律に書かれていない。法律にあるのは「施術所」。告示に入ったのは「接骨」。入らなかったのが「整骨」である。

最新の指針は、「整骨院」について可とも不可とも書いていない。語が無いという事実だけがある。ここを「違法になった」と読まないでほしい。届出は受理されてきたし、当事者の団体が「周知してこなかった責任がある」と書いている。名前で誰かを責める材料は、私が見た原典のどこにも無い。

本記事は、2026年9月29日に確認した内容による。制度は改定される。

そして、指針は看板に書けない言葉の例を挙げている。「姿勢改善」も「骨盤矯正」も、そこに入っていた。ただ、なぜ入っているのかは書かれていない。 効能を名前に入れると、何がまずいのか。第二十四条には、もう一つ、柔道整復師の技能や施術方法について広告してはならないという定めがある。次はそこを見ていきたい。

よくある質問(FAQ)

Q. 整骨院と接骨院は、どちらが良いのですか?

A. 名前では比べられません。どちらも柔道整復師が開設する施術所で、施術の内容も、資格も、療養費(保険)の扱いも同じです。柔道整復師法にはどちらの名前も出てこず、違うのは告示での名称の扱いだけになります。名前は判断材料になりません。

Q. 「整骨院」という名前は違法なのですか?

A. 「整骨院という名称は違法だ」と書かれているのを読んだことがある方もいると思います。本記事がそう書かないのは、そう言い切れる文書を確認できていないからです。 厚生労働省の検討会資料には「『整骨』は、告示に規定されていない事項である」と書かれていますが、規定されていないことと違法であることは別です。その後に出た最新の指針(令和7年2月18日)を全文検索しても「整骨院」という語は出てこず、可とも不可とも書かれていません。検討会では三つの選択肢が示されましたが、どれが選ばれたのかを述べた文書を、筆者は確認していません。届出は受理されてきました。

Q. 「ほねつぎ」と書いてある看板を見かけます。あれは何ですか?

A. 昭和45年の時点で、広告できる名称として指定されていた唯一の語です(厚生労働省の検討会資料による)。昭和47年に「接骨」が加えられ、名称についてはその形が続いています。現行の指針にも残っており、古くて使えなくなった言葉ではありません。

Q. 整骨院と整体院は違うのですか?

A. 制度が違います。整骨院(接骨院)は、柔道整復師という国家資格の免許を持つ人が開設する施術所です。一方「整体」には、免許の制度がありません。この違いは別の記事に書きました(整体師に国家資格はある?免許があるのは4資格だけ)。どちらへ行くべきかについては、本記事では扱っていません。制度のうえで何が違い、同じ一人が両方の枠を持つとどうなるかは、別の記事に書きました(整骨院と整体の違いは?分けているのは免許と保険だけ)。

Q. 整骨院で、骨折や脱臼の施術を受けられますか?

A. 条件があります。柔道整復師法第十七条は「柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。」と定めています。つまり医師の同意が必要で、例外は応急手当の場合だけです。けがをしたときは、それが骨折や脱臼にあたるかどうかの判断も含めて、まず医療機関にご相談ください。

本記事の位置づけ

本記事は、柔道整復師法(昭和45年法律第19号)の法令データを e-Gov 法令検索から直接取得し、厚生労働省が公表している資料のPDFを直接取得して、その原文を参照して作成したものです(2026年9月29日取得)。本文中の引用は、いずれも各資料の文言をそのまま引いたものです。

告示の変遷(昭和45年・昭和47年・平成11年・平成28年)については、厚生労働省の検討会に提出された資料の記述によるもので、告示の原文を確認したものではありません。 また、告示の番号については、資料の記載だけでは各告示の関係を確認できなかったため、本記事では記載していません。

「整骨院」の扱いについて、本記事は違法である、あるいは広告できなくなったという趣旨のことを一切述べていません。 確認できたのは、厚生労働省の検討会資料に「『整骨』は、告示に規定されていない事項である」と書かれていること、および最新の指針(令和7年2月18日)に「整骨院」という語が出てこないことです。検討会で示された三つの選択肢のうちどれが採用されたかを述べた文書は、確認していません。本文で引用した「不可としてはどうか」という記述は、決定ではなく、検討会の資料に論点として示されたものです。本文で引用した出席者の意見についても、意見であって決定ではなく、執筆者がその賛否を表明したものでもありません。 また「届出数が均衡している」という発言について、根拠となる調査の実数は確認できていないため、本記事では数字を示していません。

「北海道、大阪府、福岡県では95%」「会員全体でみると42.9%」という数字は、日本柔道整復師会が自会の会員の施術所について示したもので、全国の施術所の割合ではありません。 全国の施術所の数については本記事では扱っていません。

広告できない名称の例についての記述は、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復の施術所が、自らの名称を広告する場合についての指針の内容です。免許を持たない事業者の屋号を規制するものではありません。 また指針が挙げているのは例であり、個別の名称が適法かどうかを判断するのは行政です。 本記事は、特定の施術所・企業・団体を違法、不適切、あるいは推奨と評価するものではありません。

「行政は『接骨』のほうを想定していると受け取ってきた」「偶然ではない気がします」「どんどん店舗が増えていった印象です」といった記述は、執筆者個人の実感であり、行政文書の内容や統計を示したものではありません。 執筆者自身が勤務していた3か所は、いずれも「整骨院」の名称でした。

本記事は、これから施術所を開設する方に対して名称を助言するものではありません。施術所の届出は都道府県への手続であり、名称の判断について本記事は行政を代弁しません。また本記事は、特定の施術によって症状が改善することを示すものではなく、医療行為・診断に代わるものでもありません。けがや痛みについての判断が必要な場合は、医療機関にご相談ください。

制度・情報は執筆時点(2026年9月29日確認)のものです。制度は改定されることがあります。

参考文献・出典

  • 柔道整復師法(昭和45年法律第19号):e-Gov法令検索 ※法令データを直接取得し、原文から引用(2026年9月29日取得)
  • 厚生労働省「『整骨院』に係るガイドライン上の取扱いについて」(検討会 第11回 資料3・令和6年7月12日):PDF ※PDFを直接取得し、原文から引用(2026年9月29日取得)
  • 厚生労働省「施術所の名称等について」(検討会 第9回 資料2・令和5年2月13日):PDF ※PDFを直接取得し、原文から引用(2026年9月29日取得)
  • 厚生労働省「あん摩業、マッサージ業、指圧業、はり業、きゅう業若しくは柔道整復業又はこれらの施術所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針」(令和7年2月18日):PDF ※PDFを直接取得し、原文から引用(2026年9月29日取得)
  • 厚生労働省・広告に関する検討会の開催状況(ページ):厚生労働省 ※2026年9月29日時点で掲載されているのは第11回まで
  • 執筆者自身の臨床の中での経験(2026年9月)

執筆者

山﨑駿(やまざき しゅん)

あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師(すべて国家資格)/Doctor of Chiropractic(D.C.、Tokyo College of Chiropractic・CCEA認可課程)/オステオパシー(D.O.課程)専攻中。臨床歴12年、のべ数万人の身体に向き合ってきた施術者です。

【学歴】日本工学院八王子専門学校 柔道整復科 卒業/東京呉竹医療専門学校 鍼灸あん摩マッサージ指圧科 卒業/東京カレッジ・オブ・カイロプラクティック(旧RMITカイロプラクティック学科日本校)卒業/日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部 医療・福祉マネジメント学科 卒業/スティル・ジャパン・アカデミー(オステオパシー専門教育)在学中。

保有資格の詳細は運営者プロフィールをご覧ください。

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